【ポストコロニアリズム的観点】国際機関の矛盾について考えてみる

【ポストコロニアリズム的観点】国際機関の矛盾について考えてみる

 

この記事のキーワード:先進国、発展途上国、国際機関、開発支援、文化の翻訳

 

NAO
国際教養系の大学に進学しているNAOです。
NAO
学部柄、私は国際機関の支援について目にする機会があります。
NAO
国境を超えて活動している国際機関は世界中の解決困難な問題に取り組んでいる組織ですが、。そんな国際機関には矛盾もあります。
NAO
今回はポストコロニアリズムと呼ばれる文化的・人類学的な視点を持ち現代の国際機関の矛盾について言及したいと思います。

オリエンタリズム・ポストコロニアリズム的概念

 

今日における先進国と発展途上国、そして国際組織における開発支援の姿勢がオリエンタリズム、ポストコロニアリズム的な概念に近い国際活動が行われているのではないかと疑問を呈しています。

まず私が現在の先進国と発展途上国との間で、どうしても理解し難い構造が生じるメカニズムについて歴史を振り返って考察します。

これらの議論の叩き台として、解釈の必要性があるキーワードがオリエンタリズムポストコロニアリズムの概念です。

オリエンタリズムとは「世界を西洋と東洋に分けて考える考え方」1とされており、二項対立の構造であるとも言われています。

西洋近代において東方諸国に対する美術の世界観、西ヨーロッパにはない異文明に対する興味・関心を指しています。

『オリエンタリズム』の著者であるエドワード・サイード(1978年)はオリエンタリズムという西洋と東洋の世界観がある思考様式を示した人物です。

後年、エドワード・サイードは従来のオリエンタリズムに鋭い洞察をしています。

伝統的に継承されてきたオリエンタリズムの概念は、東洋人のイメージが悪いものであることを前提としてきましました。

つまり言語や地理、政治の不安定さ、国家統治の脆弱さ、そして肉体的な弱さを指摘し西洋の支配様式を強めたと言えます。

サイードはこのヨーロッパ全体に見られる思考様式を「知」「力」で結合するオリエンタリズムを象徴する支配の様式だと指摘しています。

こうしたオリエンタリズムの概念が長い期間、漠然と人々に真実であるかのように認識・共有されたことによってオリエンタリズムの一定の考え方が構築されてきましました。

またエドワードサイードはオリエンタリズムには、人々の認識の中で、東方人と西方人の間で本質的な違いが存在している可能性があると言及してます。

エドワード・サイードのオリエンタリズムは、東方に対する一辺倒的な見方を変え、西洋近代に対する懐疑を引き起こしましました。

そして、東方と西方における異文化研究や異文化理解に関する議論が活発に行われるようになりましました。


 

次に西欧諸国の主観的な支配様式に疑問を投げかけ、第二次世界大戦後の旧植民地国に残る様々な困難を研究するポストコロニアリズム理論について。

ポストコロニアリズムの主な研究対象は西欧で執筆された小説や文書に、アジアやアフリカなどの国々がどのような描写をしているのか、その他にも旧植民地国が旧宗主国をどのように描写していたのかについて研究しています。

従来の西欧諸国の主観的な解釈を問いただし、現代における思想やメディア、ジェンダーにおける分析などにも通じる視点を持っている理論です。

私は上記のオリエンタリズム、ポストコロニアリズムな支配様式が、20世紀、21世紀における社会的、経済的な格差の広がる国家間と、世界に台頭する巨大な国際機関に影響を与えていると考えます。

1960年代に入り指摘されるようになった南北問題は、世界地図の北と南に経済的な貧富の格差を生み出したと言われています。

経済発展を促進する要因である「人、モノ、金、情報」、これらのリソースは先進国に多く集まり、発展途上国の国々ではなかなか恩恵を享受できない状態が続いてきましました。

世界中の国々における経済格差が深刻な所得の格差・富の格差を引き起こし、生命を脅かすような危機に直面している場面は多々あります。

経済的恩恵を享受できない発展途上国にはどのようなタイプがあるのでしょうか。

一つは発展途上国の中でも非常に貧しく、紛争や内乱、政治汚職などが頻繁に起き、国の内情が不安定な状態である後発開発途上国。

もう一つは中国をはじめとするタイやインドなどの新興国で安い労働力を売りに外貨を獲得しています。

これらの問題に対する実効的解決手段は何でしょうか。

それは国境を超えてネットワークを持つ国際機関です。

持続可能な開発目標、通称『SDGS』は世界における大きな問題を解決すべく17のテーマを掲げています。

このSDGSの中には経済格差、貧困問題を解決する糸口が提案されているのは確かです。

「持続可能な開発目標(SDGs)は、私たちが開始した取り組みを完了し、2030年までにあらゆる形態の貧困に終止符を打つという大胆なコミットメントです。」2 、上記のように志の高いミッションステートメントを掲げています。

他にも多数の国際機関は存在しますが、これら国際機関への資金源は主に先進諸国による拠出であり、権威性の高いものであることです。

例えば国連開発計画(UNDP)における資金は全て、国連加盟国や多国機関などの国々から資金が拠出されています。

これらの拠出金は毎年50億万ドル(1ドル=100円として計算すると500億円にもなります)にも近い資金となっています。

拠出元の国は日本をはじめ、米国、イギリス、ドイツなど各先進国によって拠出されています。

先進国であるこれらの国が間接的に介入することで経済格差を埋めようとする構造になっているのです。

私は、資本主義的観念から考察しても富が集まりやすい国々が潤沢な資金を、深刻な社会問題を掲げている国々に国際機関を通じて介入する姿勢は本質的な矛盾を感じます。

世界中で不平等な問題が起きており、どちらか一方の強者が弱者を搾取するような社会構造が目の前にあります。

そこに国際機関という名目上の支援機関を作り、アンバランスな社会秩序を立て直そうとするのはオリエンタリズム、ポストコロニアリズムで見られる支配様式と類似していないでしょうか。

私も大学生活での様々な講義を通じて世界で起きている問題について目を向ける機会は多くありましました。

クーラーの聞いた部屋で教育を受け、どこか遠くの貧しい国々の映像を目にしている自分。

それは世界の実情を知る上では確かに必要不可欠な学習プロセスでしょう。

しかし支配的な側にいる自分のポジショニングは、発展途上国などで見られる貧しい人々を自分らとは違う人々、つまり経済的・社会的・文化的に差別をしている一面を垣間見る瞬間があるのではないかと思います。

確かに世界を知る機会が多く与えられている1人として私は貧しい国々の人々よりも、生活を営む上で優位な社会秩序で生きています。

美味しい水、美味しい食べ物、便利なテクノロジーによる恩恵、思想の自由などキリがないです。

先進国に住む多くの人は相対的な貧困はあれど、総じて生命の危機を脅かされるようなことは少ない。

マクロな視点で、先進国および国際機関によるパートナーシップて展開される発展途上国に対する援助をどう捉えるべきなのでしょうか。

先進企業国における工場などの発展途上国への海外移転は外貨を引き寄せるには絶好なチャンスです。

発展途上国側にとっても都合の良い話であります。

しかし客観的に分析すると大きな国際市場において、企業のグローバル展開を活発化させるために、安い労働力で働かされ莫大な富は先進国側に配分される構造は依然として変化がないままです。

つまり安い労働力で買われる発展途上国は多くの社会課題を解決するだろうお金(富)を集中させます。

そして先進国はより利益を得て、国際機関という中立な社会課題を解決する機関を通じて偽善的に資本の拠出を行なっています。

発展途上国が経済を活発にし、国民の総所得を増やす方法は先進国の進出がしやすい制度を作り、海外からの誘致を圧倒的に増やし経済発展を図ることです。

または資源や特殊な技術の獲得を持ってグローバルマーケットで対等に戦えるだけの経済的パワーを獲得するしか方法はないでしょう。

社会支援には支援を受ける側と支援をする側での見えざる力学関係が働いていることが分かります。

いわゆる名門大学出身の人が多数所属する国際機関で働く人々はボランティア的な指向性は持ちつつも、所得が発生しています。

その所得は言うまでもなく、発展途上国で得られる収入よりも高いですね。

ポストコロニアリズム的な理論で解釈すると一見、世界の諸課題を解決しようと掲げている大きなミッションは実はその支配体制がゆえに自己矛盾の状態に陥っているのではないかと気づきます。

オリエンタリズム、ポストコロニアリズムで見られる旧植民地国への支配様式、それは現代の資本主義社会を取り巻く環境で国家間で起きる経済格差をテーマに、国際機関という諸問題を観察し、解決するミッションを持つ、一つの構造に見受ける現象です。

現状を変化する明確な糸口はありません・・。

小さな一歩から始めることはできるでしょう。

それは支配的要素の強いポストにある人々は「歴史は繰り返し、同じような構造が過去にもあった」ことを強く認識し、どのようなコミュニケーションを国際社会が取るべきか協調性を持った議論が求めらているのではないでしょうか。

 

参考資料は以下になります

1<近代>世界とオリエンタリズム,http://www.bekkoame.ne.jp/~n-iyanag/articles/orientalism/page1.html
(検索日:2018年7月18日)

2目標1:貧困をなくそう
http://www.jp.undp.org/content/tokyo/ja/home/sdg/post-2015-development-agenda/goal-1.html
(検索日:2018年7月18日)